歓迎してくれたのはモロッコの歌姫

モロッコ行ってきました。
ベースとなるプラン5泊に、欲張ってもう5泊増やして。
じゃあのんびり回れたかというとさにあらず。その分滞在箇所を増やしたので、とことんハード、かつ猛スピードでモロッコの沃野と丘と山と砂漠を駆け抜けるという旅になってしまった。のんびり歩けたのはマラケシュのメディナくらい。でも面白さぎっしりの充実した旅ではありました。まだ咀嚼できていないけれど、取り急ぎ、行ってきたよー ということで。

 

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到着したカサブランカ空港、ドライバーが見つからない。
ドバイ経由の長距離線×2のフライトと、満席のドバイ-カサブランカ1時間の遅延でへろへろだったけれど、ドライバーと落ち合えないことには疲れたと訴える相手もいない。現地連絡先に電話して待つこと5分。バダーがにこやかに現れた。

目の前がもう空港出口で、車に向かって歩き出すと、背後から(隣接するカフェから)聞き覚えのある音楽が流れてきた。タミクレストだ。西サハラの砂漠の民トゥアレグ族のグループ。大好きな音楽の出迎えに、気持ちがはずむ。そしてもう一人、迎えてくれたのがモロッコの歌姫OUM (ウム)だった

 

 

バダーも音楽が好きで(きっとモロッコの人は皆好きなのだと思う)、サンバイザーの裏側がCDコレクションになっていた。最初にかけてくれたのがこの曲が入ったSoul of Morocco。すぐに気に入って、よし、マラケシュでCDを買って帰るぞ、と心に決めた。

ブルーの迷路シャウエン、エニシダにおおわれた丘を越えると古代ローマの遺跡ヴォルビリス、ジブラルタル海峡を挟んでスペインが見えるタンジェ、メディナ(旧市街)の静けさが中世のままのメクネスと、そこに喧騒と混沌を加えてかき混ぜたフェズ。

4000メートル級のアトラスの雪の岩肌やオアシスのナツメヤシ、褐色の土の色と同じ色の家並みに見とれながら、フェズから一日がかりでたどり着いたサハラ。道の両側にカスバ(要塞)が多数残っているカスバ街道を走り抜け、集落が丸ごと要塞化し、今は土にかえりつつあるクサル、アイト・ベン・ハッドウまで来れば、ハードなドライブもほぼ終わり。あとは旅の最終地マラケシュが残るのみだった。

マラケシュに入る前、沿道のカフェで休憩した。車に乗り込むとバダーが、今日が最後かもしれないからと、サンバイザーを降ろしてCDを抜き取り、差し出した。あなたが一番好きだと言ったやつ。
一週間の間、Soul of Morocco を何度も聴いた。何度目に聴いた後だったか、これが一番好きだと私が言ったのを、覚えていてくれたのだ。

(実際には翌日のマラケシュ観光のお供も、レストランへの送り迎えも、カサブランカ空港への最後のドライブも、ドライバーはバダーだったけれど。)

オフィシャル動画『Taragalte』のベースとなる音楽はグナワ。低音の三弦の弦楽器(ゲンブリ)と、金属のカスタネット(カルカベ)のリズムが特徴の、瞑想を伴うモロッコの伝統音楽だ。ベルベル人(モロッコの半数以上を占める砂漠の先住民族。マリやニジェールが拠点のトゥアレグ族もベルベルの部族の一つ)の女性がうれしいときに発するヨーヨー(と言うらしい)も、タミクレストなどとは一味違って洗練されている。

アラブ音楽入門6 グナワ・ズィクル・ジャジューカ

 

OUMのオフィシャル動画にもなっているTaragalte、タイトルはどういう意味なのかと調べてみた。ほとんど情報がなくて、ようやく、Taragalteとはモロッコ中南部の砂漠で行われている音楽フェスティバルに冠せられた名前だ、ということがわかった(地名なのかな)。よく見ると、『Taragalte』は砂漠の町 M’hamid El Ghizlaneと、 Festival of Music Taragalte desert and the World に対するオマージュと、動画の解説にもあった。地図でM’hamid マアミドを確認。このフェスティバル、行ってみたい なあ・・!

Taragalte Festival
OUMのインタヴュー記事

 

Taragalte フェスティバル関連ではこんな記事も見つけた。

「歌うことは人類共通の権利」、騒乱のマリを逃れた女性歌手

行き過ぎたムスリムの一部は歌舞音曲を享楽的だと禁止している。マリの政治混乱に乗じて侵入したこのような勢力のために、音楽家たちは故郷を追われた。記事中には、マリでの Tuaregの微妙な立場もうかがえる。モロッコでは融和と共存を果たしているベルベル人だけれど、マリの現実は異なっている。

 

OUMのCDで、バダーが一番好きな曲が『Salam』。モロッコ(に限らず、アラブ諸国)を旅行中一番よく耳にするアラビア語だ。エッサラーム.・アレイコム(こんにちは)、ダール・エル・サラーム(マラケシュのレストラン名)というぐあい。平和という意味だ。

あちこちで音楽フェスティバルが開催され(世界的にも有名な、ガイドブックにも紹介されているものも)、伝統音楽から人気モロッコポップスまでたくさんのCDが沿道のドライブインの店頭に並び、レストランでは二種類のダンス、ふた組の音楽家が二時間も三時間も歌い踊り、広場にはグナワやベルベルの辻音楽家たちが溢れるモロッコは、確かに平和な国であった。

 

『Salam』
Youtube にはバリバリのロックライブもあってかっこいい。
でも、『Taragalte』の動画と同じ顔触れのこれもいいなあ。

 

 

4 Comments

  1. vaiさんの旅行記はいつも、私がイメージする「旅行」の概念からつきぬけている気がします。
    エジプトの時も思ったけど、ドキュメンタリーみたいです。
    この女性はとても魅力的な歌い手ですね。
    声がいい。
    そのMVがそのままその土地の暮らしを映していていますね。

    あぁ、世界はほんとに広くて広くて、ほんとに広い。
    私がこの土地で延々と悩んでいるこの小さいのか大きいのかわからなくなってることは、
    この砂の上に立って思い出したら、自分の胸のなかでどんなふうに動くんだろうかと思ったりしました。

  2. シータちゃん、コメントありがとう。
    さっきiPadから返信しようとして何かに触ったらシータちゃんのコメントが消えちゃって、メールで来てたやつでアップしなおしました。ごめんね~。

    >vaiさんの旅行記はいつも、私がイメージする「旅行」の概念からつきぬけている気がします。

    しーたちゃんのイメージがどんなかわからないけれど、でもね、
    旅ってみんなそれぞれ違うんだよね。イメージもだけど、行ってみたかんじも。

    >この女性はとても魅力的な歌い手ですね。

    でしょう?
    私としては、しっかりとした伝統音楽の基盤があって、
    その上に軽やかに西洋音楽が乗ってるのが気に入ったの。

    >そのMVがそのままその土地の暮らしを映していていますね。

    モロッコはここに見られる砂漠だけじゃなくて、すごいバラエティに富んだ自然景観(+都市景観)と、
    そのバラエティの分異なった人々の暮らしがある国でした。
    ここに見られるのはそのほんのほんの一部です。

    >私がこの土地で延々と悩んでいるこの小さいのか大きいのかわからなくなってることは、
    この砂の上に立って思い出したら、自分の胸のなかでどんなふうに動くんだろうか

    そんなもんどうでもよくなるに決まってまんがな。
    でもそのためには行かないといけないのよね。
    で、そこは遠ければ遠いほどいい、と私は思っております。

  3. >そんなもんどうでもよくなるに決まってまんがな。

    あは、そうだよなぁ。
    絶対そうだよな。
    そのために旅というものがあるのだと言えるかも。

    >でもそのためには行かないといけないのよね。
    で、そこは遠ければ遠いほどいい、と私は思っております。

    うん、できるだけ遠くに・・・
    行きたいなあ~~

  4. シータちゃん、

    えーと、旅に出ると、今ここにいる自分しかなくなるので、
    その意味でいろんなことがどうでもよくなっちまうのでありますが、
    そう構えずに、気軽に行くのもいいと思うよ。

    >そのために旅というものがあるのだと言えるかも。

    で、これはおまけみたいな感じもかもしれない…。

    んでもって、おすすめは一人旅です。
    どうぞ、お出かけください。

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